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Like breathing

息をするように好きになってしまったのだから、仕方ない

SomeGirl(s)感想:刹那的な"男"のこと。

SomeGirl(s)の千秋楽が無事に終わったようですね。

健ちゃんを初め出演者、パフォーマーのみなさん、この作品に関わったすべての方にお疲れ様とありがとうを。

前回のエントリーでも書いたように、私は11月9日のマチネ公演を見させていただきました。もう一週間も経つのか…。この一週間、ずーっとずーっとサムガのことばかり考えていました(笑)。

 

さて、一週間前の記憶を辿りながら感想を書いていこうと思います。1回のみの観劇ですので、曖昧な部分もありますが、その瞬間に得た自分の感触をまとめていきます。

個人の主観での考察、感想ですので、まあ話半分にとらえていただけたら。人それぞれに見方がかなり変わる物語だと思いますし。

お付き合いいただけたら幸いです。

 

 

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私はこの作品、とても好きです。

本当に好き。自分でもどうしてこんなに好きだって思うんだろうって考えたくなるほどに、ビビッときました。

 

でも正直、途中までは「どうだろうなぁ…」と思っていました。

物語として大きな起伏があるわけでもなく、"男"も言い訳がましく「いや、違うんだ」の繰り返しで真意がなかなか見えてこない。なんなんだろう、このやり取りは?って思ってました(笑)。

ですが、そんな思いはラストシーンですぱーんとどこかに飛んで行ってしまいました。

鼻をすすりながらカセットテープのテープを巻き直し、口元に薄い笑みを浮かべて彼女に虚しい愛の言葉を囁く"男"。

「うん、愛してるよ。ずっと、ずっと…うん。ずーっと……」

このシーンを見るためだけに、何度でもグローブ座に通える!とこの瞬間、心から思いました。

それだけ、この瞬間の"男"の表情、目線の使い方、声音、間の取り方、どれをとっても素晴らしかったのです。

 

全体としては、おしゃれな舞台だな、と。

開演前に会場に流れている音楽や、シーン毎の間に流れる音楽がとても素敵で。自然と気持ちが高揚してくるような。

始まる前、セットの壁にプロジェクションマッピングで劇中のセリフが英語で流れていたのもまたおしゃれでした。

開演前、ぼんやりと読んでいたのですが、"男"のものであろうセリフの軽薄さが感じてとれてどんなクズ男な三宅健が見られるのだろうかとワクワクしてました(笑)。

あとは、舞台転換がとっても面白かった!

ホテルマンに扮した3人のパフォーマーの方がリズムに合わせてルームメイクをしていくようにセットを変えていく様が鮮やかでした。暗転をせずに世界観を保ったまま、舞台転換をする演出は素晴らしかったです。

本当に"おしゃれ"の一言に尽きますね。だって、会話劇ってだけでいかにもおしゃれだし…(笑)。

 

 "男"は、本当にどうしようもないやつですね。

「君が傷ついていないか」と言いながら、結局自分のことしか考えてない。エゴイズムの塊だなぁ…と私は思いました。(そしてまた、自分のことしか考えていない自分に気づいていないようなところがズルい!)

自分の痛みは恐れているくせに、人の痛みには気づくことができない。

私は、彼は刹那的な生き方しかできない人間なのだと感じました。

彼にとっては「今」が重要で、今の感情、今の快楽、今の楽しさを重視している。

彼にとっての「今」の真実とは、次の瞬間にはもうすでに「過去」であって、その瞬間にはその瞬間の真実があるから、それはもう真実ではないものになっているかもしれない。

それは、傍から見たらとても不誠実でひどいことに見えてしまう。

だけど、これが彼の本質なのではないかと私は解釈しました。

"男"にとっては、すべてが真実なのだと思います。そして、すべてが真実ではない。

本人にとっては絶対的な正直者であり、他人にとっては絶対的な大嘘つき。

 

私があのラストシーンが好きで好きでたまらない理由は、おそらくこれです。

会話を録音したテープを「こんなもの」と引き抜いていた時の"男"の気持ちは嘘じゃない。だけど、次の瞬間、今の彼女からの電話がかかってきて。彼女からの電話に応じて、笑顔を浮かべてテープを巻きなおしていた時の気持ちも、また真実。

真実が真実でなくなり、新たな真実が生まれて新たな嘘が生まれる瞬間。

この刹那性をまざまざと見せつけられたシーンだと思っていて。それを感じた瞬間、鳥肌が立っていました。――ああ、この人は変わらない。でも、それでいい。

あの時自分が抱いた感情をどう説明したらいいか、自分でもよく分かりません。

簡単に言ってしまえば、とにかくぞくぞくしました。

本音を見せたように見えた"男"が、また元に戻って行ってしまう。

残念だとか悲しいとか、そういう気持ちは一切なく。むしろ、クズがクズのままでいることにたいしてある種嬉しさに近いような面白さを感じていたような気がします。

 

私は"男"のことがとても好きです。前述のとおり、ダメなやつだなーと思って見ていましたけど(笑)。

そんなダメさもひっくるめて、自分では上手に生きているつもりでも、実は多くの人を傷つけてしまう彼の無意識的な不器用さがとても愛おしい。

考えれば考えるほどに、好きになっていくんです。(いわゆる"フィルター"ということもありますが!(笑)。)

 

私がこう感じるのは、私のこの舞台への観劇態度が一因にあるような気がします。

他の方の感想を読ませていただいて、自分には"男"が許せないとか腹が立つといった感情がないな、と思って。

それはきっと、私が完全に引いた第三者的視点で見ていたからなのではないかな、と。登場人物の女性たちに自分を寄せれば寄せるほど、"男"がとても嫌な奴で、腹立たしく思うのではないでしょうか。

私はとても「面白がって」、この舞台を見ていました。

面白い、というよりも面白がる、という態度で見ると、ある意味でとても"気持ちのいい"舞台でした。

 

"男"って、本当に刹那的に生きているように見えるから、分からないことがたくさんあります。…私の記憶力の問題もありますが(笑)。

あの瞬間、彼はどう思っていたのか。知りたくて知りたくて、でも分からない。

この「知りたくなる」感覚は、なんだか三宅健本人にも相通じるところがあるような気がします。悲しいほどにア・イ・ド・ルな彼と。

キャラクターが似てるとか役作りがいらない(笑)だとか、そういう風には思いませんが、根底にある一部分がわずかに重なりあっているように思えました。

"男"という人物像を、三宅健という人物を通して見る不思議な巡り合わせも、また楽しかったです。

 

ここから先は私の想像でしかありませんが。

彼はきっと、いつまでも結婚しない、というかできないだろうなと思います。今の彼女にもなんやかんやと別れを告げて、あるいは黙って居なくなってしまうのではないかな。そして、彼の小説はじきに行き詰るでしょうね。あんなネタがいつまでもまかり通るとは思えないし、読者も離れて行ってしまうのではないかと。

だけど、彼は決して一人ぼっちにはならないと私は思います。とても悔しいですが(笑)。最期のときも、隣にはその時愛している女性が隣にいて、愛を囁いているに違いないな、と。

それが私の想像する"男"のこれからの生き方です。こういう風に書いておいて、あー好きだなって思ってしまうあたり、私もなかなかに危険かもしれません(笑)。

 

最後に。物語全体を通して。

この物語はまるで4つのパンドラの匣を開けてしまったようなお話だと思いました。(ボビーのセリフに似たような話がありましたが。)

それぞれの女性の中にしまいこまれていたパンドラの匣を"男"が開けてしまったから、怒りとか憎悪とか嫉妬とか、そういった悍ましい感情が解き放たれてしまった。普段ならあまりお目にかかりたくはないような、そんな感情たちに包まれるのはある意味で気持ちのいい体験でした。

そういった悍ましい感情の中で見つけられにくくなっているけど、確かにみんなの匣の中には"愛情"が残っている。その小さな輝きに手が届かないもどかしさが、悲しくも愛おしい。

 

救いが提示されている物語ではない。それより先のことは、自分に重ね合わせたり想像を広げたりして、補完して楽しめばいいんじゃないのかな。

正解は千差万別で人それぞれ。

私にとっての正解は、この刹那的で不器用な"男"を愛おしく想うことでした。

 

素敵な物語を届けてくれてありがとう。そして何より、板の上で芝居をする三宅健を堪能できて、とても幸せでした。本当に、お疲れ様!

 

 

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そして、すっかりSomeGirl(s)の世界にどっぷりな私は、勢いでこんなものをポチってしまいました。

Some Girls

Some Girls

 

 井ノ原さん風に言うと、「…買っちゃった♡」ってやつです。

ほんと、インターネットショッピング怖い!クリック一つで「ご購入ありがとうございます」って!

海外から発送されるのでまだ手元には届いていないのですが、今からとても楽しみ。

勢いで原作本を購入してしまうなんて、本当にこの世界にはまってしまったのだなと我ながら自分が面白いです。

実際、やらなくてはいけないことがたくさんあるので、この本に手を付けられるのはだいぶ先のことになってしまいそうですが、今回の記事でも言いたいことの半分くらいしか書けなかったので、読了したらまた感想のエントリーを上げたいと思っています。

 

今週末はフランケンシュタインの観劇が待っているので、それに向けて今週一週間、がんばりたいと思います。